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お母さんの涙で濡れた紙面には、お父さんが、いや、もとお父さんが、車で人をはねて殺してしまったという記事が書かれていた。
飲酒運転という文字が目に入った。
被害者は五十二歳の会社員。
掲載されていた顔写真は、まさしく、ふくらはぎから出てきたポラロイド写真の中年男性と同一人物だった。
「だれが死んでも、写真になって出てくるわけじゃねーんだ。まず、殺人事件であること。自殺や事故死じゃダメだ」
「自動車事故で殺しても、殺人になるんだ」
「そうらしい。で、もうひとつは加害者がオレの顔見知りであること」
「顔見知り? 顔を知ってるってこと? 知り合いだってこと?」
「ただ知ってるだげじゃダメだ。ちゃんと会って、ちょっと長めの会話したことがある人」
比較的親密な知人による殺人(故意でなくても直接的な犯行なら可)の被害者が、彼のポラロイド写真に写る条件らしい。
彼なりに、過去の経験から導き出した条件だ。
七歳のときの、もとお父さんの事件以降、十三歳、近所のパン屋主人による隣人殺害事件、十四歳、通っていたゲームセンターの従業員同士による喧嘩の末の殺人事件でも同様に写真が出現したのだという。
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