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安城くんが机の下で小さなガッツポーズを作った。
たぶん強敵を倒したのだろう。
矢作くんは死闘の結末に目を潤ませ、佐々木さんグループの声なきおしゃべりは尽きない。
兵堂さんは相変わらず美しいし、高津くんはグミからハイチュウに変えたようだ。
僕はといえば、丸メガネの神父がホームレスの呪いの言葉を聞いているシーンにさしかかっていた。
そんな古典の授業も残り十分を切った頃、突然、僕の目の前に小さな紙切れが降ってきた。
髪の毛に何かが触れたと感じると、バウンドしてチェスタトンのページの上に、小さく折りたたまれた紙切れが転がった。
なんだろう、これ。
僕は後ろを振り向く。
状況から考えて、後ろから投げられたものに違いない。
僕の背後で、そんなことをしそうな人物は。
同じ中学出身の小澤くんならやりかねないが、机の上に突っ伏して熟睡中。
成績学年二位の石村くんは、朱川先生の解説をすべらない話でも見ているかのように楽しそうに聞いている。
彼の可能性は低そうだ。
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