第2章

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その日から、私は月草古書店に行かなくなった。 彼を、波瀬拓海であり、水瀬海である彼を、好きなんだと自分の気持ちを認めたから。 彼を、大切だと思ったから。 だから、彼を守りたいと思った。 彼がくれた、キラキラした時間があれば、私は下を向かないですむ。 彼が『 ふわってさせてた方が可愛い 』って言ってくれたから、あの日から髪をきつくまとめないようにした。 ストレートの髪をそのまま風に遊ばせたり、緩くシュシュでまとめたり。 もし、彼の視界に、欠片でも映れたら、それだけで嬉しいと思って、背筋を伸ばして教壇に立った。 でも、彼を世間の目から守ることしか考えてなかった私は、一番大切なものを見落としていたのかも知れない……
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