401人が本棚に入れています
本棚に追加
/410ページ
その日から、私は月草古書店に行かなくなった。
彼を、波瀬拓海であり、水瀬海である彼を、好きなんだと自分の気持ちを認めたから。
彼を、大切だと思ったから。
だから、彼を守りたいと思った。
彼がくれた、キラキラした時間があれば、私は下を向かないですむ。
彼が『 ふわってさせてた方が可愛い 』って言ってくれたから、あの日から髪をきつくまとめないようにした。
ストレートの髪をそのまま風に遊ばせたり、緩くシュシュでまとめたり。
もし、彼の視界に、欠片でも映れたら、それだけで嬉しいと思って、背筋を伸ばして教壇に立った。
でも、彼を世間の目から守ることしか考えてなかった私は、一番大切なものを見落としていたのかも知れない……
最初のコメントを投稿しよう!