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夕闇が辺りを満たす頃。
学校から家への帰り道に、もう学生の姿は見えない。
だから、私は安心してあの扉を開ける事が出来るんだ。
表通りから一本路地を入って、曲がり角を曲がると一気に音が少なくなる。
ブロック塀の上でいつも寛いでいるふっくらとした白い猫は、近付くのは許してくれるけれど、まだ一度も触らせてはくれないの。
そして、その路地にひっそりと佇む古風な扉が、私の目的地。
ギィっと、どんなに気を付けて開けても鳴る扉の向こうには、独特の古書の香りとBGMひとつ掛かっていない静かな空間が待っている。
「……いらっしゃいませ」
カウンターの彼は、こちらを殆ど見もしないで、ぼそりとそう言った。
それも、いつもの事。
たぶん、見てはいないんだろうけど、それでも小さく頭を下げる時はいつも胸がドキドキする。
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