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「さあな。いつだろうなァ。お前が生まれた時――いや、この世界が生まれた時かな」
どういう意味ですか。
「説明しても解らんさ。いや、言ったところで解ろうとしない。だから言わない。まあ、かいつまんで言うなら、そういう物語なんだよ」
十を言わないなら、一も言わないでください。
「くく。思わせぶりな男なんだよ、俺は。あと、一つ言っておくなら。お前もまた自己中心的存在の人間だぜ」
そうですか。
「怒らねえのな。――いや、怒れねえのか。もしかしてお前、自己中心的存在が迷惑な存在だと思ってるんじゃないのか。老婆心で言っておくが、それは違うぜ。自己中心的な存在にならざるを得なかった人間もいる。――溢れんばかりの有り余る才能っつーもんを持って生まれてきちまった奴らだ。そいつら他人から評価されない――他人が評価できないというべきか。走ってるレールが違うみたいなもんだ。だから、自己中心的な存在になるしかない」
ぼくの心を読んだんですか。
「くくく。それを訊くなよ。解ったっていいことねえぜ。――だからもしかしたらお前も才能っつーもんがあるのかもしれねえよ」
どこか確信めいた口調だった。
あなたはぼくの何かを知っているんですか。
「お前の知らないお前を知っている――んだぜ」
ニヤリと、皮肉るように笑う。
一方的に知られてるのは癪なので、あなたのことを教えてくださいよ。
「俺のことか? くくく。俺のことを訊くとは、そんな奴は初めてだ。面白い。俺は言うなれば――他人から評価されず、自己評価すら行えない人間だよ」
それはつまり――
男はまだ、皮肉るように笑っていた。
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