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「お、お願いって?」
「俺の母上と父上の話って知ってる?」
エクレールはコクコクと頷く。
「第二夫人になったってことでしょう? 旦那様と関係を持ったとかで……」
「へぇ〜。そうなっているんだ」と、ルカはもごもごと言っていたが、やがて話を戻した。
「そう。俺の母上は父上の愛人で、俺を孕んだのを機に、第二夫人になった。そうして、俺が生まれると、第一夫人が自分の息子の地位と未来を危ぶみ、母上ごと俺を外に出した」
ルカは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「それなのに、父上は多額の金だけ渡してきただけで、一度も会いに来てくれなかった。母上は金を渡された時に言われたらしい。俺が男だったから、外に出すんだって。女だったら、政略結婚の駒に出来たのにって」
「そう。それはお気の毒ね……」
エクレールにはそれしか言えなかった。どんな慰めの言葉も、ルカには不似合いなーー傷つけてしまうような気がして。
エクレールは自分の家族を思い返す。
幼い弟妹と、少ないながらも日々の生活費を稼ぐ両親。貧しく、エクレール自身も冬の間は住み込みの奉公に出て、春以降の生活費を稼ぎながら、口減らしをしなければ、家族の生活はままならなかった。
それでも、エクレールの家族には温かさがあった。顔を合わせれば、心を落ち着かせられるものが、そこにはあった。
けれども、ルカはお金もあって、食べ物や着る物もあって、生活に不自由していない代わりに、家族の温かさはなかったのだろう。
それを思うと、エクレールは悲しい気持ちになって、胸が痛くなった。
「そんな父上に、俺は復讐をしたいんだ。明後日開かれる晩餐会を台無しにしたい」
「はっ……?」
ルカはエクレールの両頬に手を添えた。逃げられないように、顔を近づけてきて囁いた。
「協力してくれるよね……?」
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