その日の夜

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ルカによると、旦那様が屋敷から寄越してくれた使用人ーーおそらく、街の職業安定所から紹介されてやってきた人達。は、細々と暮らしているルカ達親子を見下した。 中には、「裕福な暮らしをしている貴族だって聞いてきたのに!」と激昂したり、はたまた、ルカの母親の僅かばかりの財産を持ち逃げしたり、金品を横領したりしたらしい。 ルカが成長してからは、その状況を知ったルカが使用人達を追い出していた。 その結果、屋敷内にはルカとルカの母親、ルカの母親の使用人ーールカの母親が屋敷に来た時から使えるメイド、の3人しか残っていなかったとの事だった。 「その、ルカのお母さんは……?」 「知りたい?」 そうして、エクレールを見つめたルカの瞳が、ふいに揺らいだ。 その瞳の中に答えを見つけた気がして、エクレールは目を伏せる。 すると、ルカは吹き出した。その変わりように、エクレールは目を白黒させた。 「な、何がおかしいのよ!?」 エクレールは顔を真っ赤にして叫んだ。ルカは息を整えると、いつものように余裕を感じさせる笑みを浮かべたのだった。 「あまりにも、悲しい顔をするから、つい」 「もう……」 「母上は生きているよ。今も一人で屋敷に住んでいる」 寂しそうにルカはそれだけ言うと、薪を持ったまま屋敷の中へと戻って行った。 エクレールもその背を追いかけるようにして、屋敷の中へと入って行ったのだった。
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