知ってしまった秘密

1/4
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ

知ってしまった秘密

エクレールはルカを連れて屋敷内を案内した。エクレールが話しかけても、ルカは時折こくりと頷くだけで、話が全く盛り上がらなかった。 やがて、旦那様の部屋前にやってきた。すると、丁度、出掛けるところだったのか、身支度を整えた旦那様が部屋から出てきたところだった。 「旦那様」 エクレールは通例通りに、壁に背をつけて、頭を下げた。お辞儀は九十度。これも指導された通りだ。 一つ誤算だったのはーー、 「ルカ!貴方も頭を下げて!」 エクレールはルカの肘をついて、小声で急かした。しかし、ルカは旦那様を睨みつけたまま微動だにしなかったのだった。 エクレールの声に反応したのは、ルカではなく旦那様であった。 「ルカ? なぜ、お前がその名前を名乗っている?」 エクレールの言葉を聞いた旦那様が、眉を寄せてルカを睨み返した。 一触即発の空気を察したエクレールが、口を開こうとしたその時。 「父上」 ルカが旦那様に向かって声を掛けたのだった。 「このご説明は必ず……必ずします。今は……晩餐会までは、このままでいさせて下さい」 お願いします。と頭を下げたルカの姿を、旦那様は鼻で笑った。 「親子揃って、ここまで愚かだったとはな……」 旦那様は呟くと、そのまま去って行ったのだった。そこに慌てた様子で、ドインさんがやってきた。 「旦那様! 迎えに行くまで、部屋に居て欲しいと……」 「遅い。先に朝食の席に行く」 「しかし、まだ奥様の用意が……」 「くどい!」 そうして、ドインさんと旦那様は、そのまま朝食が用意されている食堂に向かった。 「い、今のは……?」 エクレールがオロオロしていると、頭を上げたルカに睨まれたのだった。 「今の話、聞いていたよね?」 エクレールはルカの怒気にすくみあがって、壁に背をぶつけたのだった。 そのまま、エクレールがコクコクと何度も頷いていると、ルカが迫ってきて、頭を挟んで壁に両手をつけたのだった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!