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「七美も一緒に入ればいいのに」
温泉に浸かる桜海姫の声。
七美は首を横に振り、桶で桜海姫の肩に湯を掛ける。
御台と一緒に女中が入浴する事など有得ない。
気心が知れた間柄だとしても、それは無理な相談だった。
「夫婦石、ご覧になれましたか?」
二人で参拝すると言われ、お鈴の局と桜海姫だけで寺へと向かわれた。
参拝している間、七美達は籠で待っていた。
「……そうね。ちゃんと参拝出来たわ。本当に来て良かった」
桜海姫の表情は湯気に邪魔され、七美からは見えなかった。
その桜海姫は憂いを満ちた表情を浮かべ、悲痛を我慢するように、唇をきつく結んでいた。
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