第1章   再会

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「姉ちゃん、私が悪かった、今までのこと、ごめん」 という言葉と、 「直也がこんなことをしてしまったので、とりあえずは そのことを姉ちゃんに伝えなければと思って」 というこの言葉。 改めて並べてみると、これは明らかに矛盾していないだろうか。 私はここに違和感を感じていたのである。 やはり私が瞬間的に察した違和感は間違いではなかったのだ。 謝っているのか謝っていないのか。 本当に悪いと思っているのか思っていないのか。 益々混乱する。 もう一度思い返してみる、冷静に。 そうすると、一つの仮定が見えてきた。 とりあえずは、一旦は謝ったのだ。 だけど、そこは本心ではなかったがゆえに、 その次の言葉に繋がったのであろう。 一旦は申し訳ないと言う気持ちを現した後で 自然に口に出たという方が今日子の本心に沿っているだろうか。 一旦の謝罪をうまく和らげているというか、 誤魔化している。 もうこれ以上の謝罪を避けているというか、 そうならないような防御である。
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