第1章   再会

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妹が到着するまでの間、私は妹のその言葉を 何度か思い返してみていた。 「とりあえずはこんなことがあったということを 姉ちゃんに伝えておかなければと思って・・・」 妹はこう言ったのである。 確かにこう言った。 どうしても残る違和感。 それを耳にしたとき、私の中に違和感が 入ってきたので、こうも耳に残ったのだと思う。 でなければ、こんな一大事が起こっている時に、 たった一部分だけのこの言葉が こんなにも心に引っ掛かることなどないはずである。 これは一体何なんだろうか。 取り方によっては、 自分の主人がみんなに迷惑をかけるようなことを してしまったので、 そのことをみんなにお知らせしておく義務が 私にはあると思うので連絡しました、 ということとも言える。 妹はこう言いたかったのだろうか。 これは素直に受け取れば、こんな大変な時に そこまで気を遣ってもらって、 あるいは、 私たちにまで心配りをしてくれるなんて ご親切にどうも、 ということになる。 ただ、これではあまりに素直すぎるというか、 それではあまりにお人好し過ぎるとは 思うのだけれど・・・。 妻である自分の務めとして連絡しました、 ということか。 みんなに迷惑をかけることになるから あるいは、みんなが知れば驚くだろうから 先に知っておいた方がいいだろうと思って、 ということか。 どちらにも取れるし、 どちらとも取れる、 こんな事態において適切ではない表現ではあるが、 なんとも絶妙な言い回しである。 言い換えれば、妹らしいというか・・・。
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