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自室に下がると
城主様が用意したといった衣が並べてあった
「ひ、ふ、み…」
合計で10枚
様々な色に、柄にーー
一着は藤色の衣があった
わたしが大切にしている色だと気付いてくれたのだろうか……
これから 私たちはどうやって生きていけばよいのだろうか……
思わず 腹に手を当てて 振動もしないわが子に声をかけたーー
亡くなった殿を思う……
心優しい方だった
いつも わたしを愛して 大切にしてくださった
また 甚五郎のことも それはそれは 大切にしてくださった
夫として なんの不平も持ったことは無い
ーーただ 不幸なことは 我らが生き抜いていかねばならないのが
戦国の時代だったこと
弱きものは すぐに 強きものに奪われ
親兄弟も殺しあう
そんな世に 夫婦になっていなかれば 我らはいつまでも仲良くできたはず
しかし 今は戦国の世
夫は 当主として 武将として 優しすぎたのだ
皆の意見を聞き 皆の意見に耳を傾けた
だが それでは いつまでも意見がまとまらぬ
迅速な行動ができぬ
そんな武将であったからこそ 戦死したのだ
腹の子は母である私が 私の力で守っていくしかないのだ
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