第9章

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「城下におりた夜、あの日は朝から体調が優れぬと申されておりました これは本来なら黙っておくべき予定でした 吉乃さんが 織田に厄介になっている身なのに 病など迷惑はかけられぬから 若には秘密にしてくれと頼まれましたので それにあのときは わたしも吉乃さん自身も身篭ったことに気付いておりませんでした それから 吉乃さんは 岐阜城に戻ってこられた 体調が悪く ときどき 吐いている様子を見ていました 見て見ぬふりをしていたとも言えましょう 米のにおいに顔をしかめるのも見たこともございました みごもった女特有のにおいが苦手になるという症状でしょう それからしばらくたったら 今度はえらく食事を召し上がるようになりました 身篭った初期の症状がおさまったようでした 若の子ならば 身篭るのに早すぎなのです 城下に下りた日は 吉乃さんが岐阜城にきてまだ10日たらずのこと…… 岐阜城に来る前に身篭った子に相違ありませぬ」
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