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深緑の三角帽子を被る頭は酷い。
片目はほつれて眼球が飛び出しているようだし、鼻である人参は腐って虫が食いついてる。
不気味すぎて畑に置きたくない代物だ。
「カラスの奴に馬鹿にされないようによぉ。知恵が欲しいんだけどよぉ。やっぱ入れる脳みそは選ばなきゃダメかなぁ」
「ええ。私が素敵な脳みそを選んであげる」
「じゃあ僕の心になる心臓は?あいつから抜き取っていい?」
そう言うのはブリキのきこりである。
こちらは案山子と違い精巧な作りで、人間大というところを除けば違和感はない。
ただ油が切れているのか、動くとギィギィと金属音を響かせた。
その手に持つは木こりの斧。刃にはなんだか血痕みたいな跡が残っているような…… 。
それを担いでギィギィと動く様はただのホラーだった。
「東の魔女の呪いのせいで、僕の身体は無くなってしまった。……呪いをかけられたこの斧が最初に切断したのは左足なんだ。ああ、あれは痛かったなぁ。でもそれだけじゃ終わらなかった」
ブリキのきこりは気が狂ったように叫び出した。
「その次に右足を、その次に両腕を、その次に頭を!その度に僕は身体をブリキに変えた!頭を失いようやく呪いも解けたと思ったのに!終いには胴体を真っ二つにされて全身がブリキになった!そして人の心を失った!!ああ、なんでこんなことに!僕はただ愛しのエイミーと寄り添いたかっただけなのに……!」
「安心して。あなたの心は近いうちに戻るはすよ。ふふっ、東の魔女はもう死んだ。その心臓が直に届くわ。それをあなたにいれましょう」
オズは心底安堵した。
ドロシーがゴーといえば、ブリキのきこりはすぐさま襲ってくることは明白。
悲惨な境遇からか、ドロシーのパーティーの中でブリキのきこりは飛び抜けて強力な戦闘力を見せている。
夜中に彼とばったりあった日には、おちおち夜も眠れない。
「は、話が脱線してるよ。は、ハロウィンをやろうという話だったでしょう?」
そう助言するのはライオンだった。臆病な性格をしており、至って普通。
大きいだけのただのライオンだ。
このパーティーにおいて唯一まともな存在である。
ただ気になるのが、ドロシーが臆病なだけのライオンを気に入るはずがないのである。
どうせろくでもない何かがあるに違いない。
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