住人達のハロウィン風味~ピストルを添えて~

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「ああ、そうだったわね。あなたの脳みそで理解できるかは分からないけど、教えてあげるわ。ハロウィンというのはね。ここにパンプキンパイがあるでしょう」 そう言って適当に指差した先には何もない。 だが次の瞬間、 「ど、どうぞ。パンプキンパイでございます」 なんとライオンが人間に変身したではないか。 その格好はコック服できちんと帽子まで被っている。 その手には何処から持ってきたのか、作りたてらしく湯気を立てるパンプキンパイがあった。 「ふふっ、流石ね。私の目は確かだったわ。臆病はいいかえれば心が繊細ということ。そして繊細さがあってこそ成り立つ仕事がある」 「お、臆病は治りません。ですがあなたさえいてくれれば、必要以上怯えることもありません。わ、私はあなたがここの女王で有り続けれるよう、口に合う料理を作り続けるだけです」 ライオンを顔を赤らめておどおどと言う。その頬にドロシーは手を伸ばす。 「改めていい男ね。ライオンらしい逞しい身体をしてるし、黄金色の毛並みをした頭髪なんか特に素敵よ。痩せて女々しいオズとは違うわ」 ーーそりゃムキムキな体躯した魔法使いがいるわけないでしょう!! 「それでそのパンプキンパイをどうするので?」 「ええ。こうするのよ」 ドロシーはひょいとパンプキンパイを持つと、「えいっ!」と可愛らしい掛け声と共にオズめがけてパンプキンパイを放り投げる。 いきなりの事態にオズは対応出来ない。そのまま顔面キャッチした。 視界がオレンジ色に染まる中、ドロシーの声だけが聞こえた。 「ハロウィンというのはね。嫌いな人にパンプキンパイを放り投げて日頃の鬱憤を晴らす祭りなの」 「……作用でございますか」 ーーじゃあ祭り当日は無礼講ってことで、あなたの顔面にパンプキンパイぶち込んであげますよ!! 「そんなわけないじゃない。そんなおかしな祭りがあるわけないでしょう。やっぱり馬鹿は馬鹿ね」 「カッカカカ!間抜けヅラだぁ!」 「うう……心臓が欲しい……」 「パンプキンパイ、もう一つ用意致しましょうか?」 ーーマジでこいつら殺してやりたい!! オズはあははと笑いながら、内心で怒り狂った。 「あなたが馬鹿のせいで本題がどんどんズレるわね。本当のハロウィンは秋の収穫を祝って、悪霊の類を追い出す行事よ」 「それは良き祭りでございますね」 ーーあなたたち悪霊を追い払ってくれるならね!
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