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「そうでしょう。私のいた世界では、かぼちゃをくり抜いて人の顔の形にしたジャックランタンを用意したわ。善霊を引き寄せ、悪霊達を遠ざける効果があるといわれているの。それがこれよ」
さっとライオンがそれを用意する。オレンジ色をしたカボチャは、確かに人の顔の形にされていた。
「これをたくさん用意して、エメラルド・シティに配置するの。あ、中には蝋燭をいれてね。夜になったらそこに火をつけるの」
「はぁ。提灯みたいになるわけですね」
「まぁ!珍しく頭を使ったわね!その通りよ」
この程度ならもう華麗にスルー出来てしまう自分を嫌悪してしまう。
「それとハロウィンに必要なのはお菓子よ!たくさんのお菓子!とりあえずくり抜いたカボチャは、全部パンプキンパイにしちゃいましょう。あとはライオンのセンスでお菓子をチョイスしてね」
「ど、ドロシー様のご意向に添えるよう頑張る所存でございます」
ライオンは恭しく一礼し、そのままボワンと煙を立て元の姿に戻る。
そしてやはりオドオドした様子で何処かへ向かっていく。厨房にでも向かったのだろう。
「というわけで、お菓子とジャックランタンの用意は私が特別にしてあげる。後の事は任せたわ」
「後の事?」
「決まっているでしょう。下準備よ」
ドロシーは分厚い本を雑にオズの前にどさっと放り投げた。
その名をオズは口に出して読んだ。
「……異世界の文化一覧?随分と古い書籍ですね。このような本は私の本棚には……」
「西の魔女を倒した時の戦利品の一つよ」
そう言って椅子にかけられた箒をうっとりと眺める。それこそが彼女の力の源なのだ。
西の魔女が所有していた以上の力を発揮している今、オズがどうにかなる相手ではない。
「私としてもハロウィンは楽しみたいわ。馬鹿なあなたに、女神の慈愛を持つ私がヒントを上げるというの。ありがたく受け取りなさい。それを参考にして十分に私を満足させること。いいわね?もし私をがっかりさせたら……」
ちらりとブリキのきこりを見やる。それだけで二人の意思は疎通する。
「了解です我が主。そのようなことになれば、オズには私が体験した以上の苦痛と恐怖を味合わせて殺すことに致します。ふ、ふふっ。西の魔女はいい声で鳴きましたね……!では、僕はいざという事態に備えておきます」
「カッカカカ!俺も俺も!どうせ脳みそ詰められるまで馬鹿なままだからなぁ!」
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