住人達のハロウィン風味~ピストルを添えて~

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夜だけはドロシーからの呼び出しをくらうことのない安寧の時間。 その間に出来る限りのリラックスをしたい。 ーーもう今日は考えるのはやめよう。また明日にすればいいさ。今はただこの星々をのんびり眺めていよう。 「……ん?」 眺めていた望遠鏡に何かが写った。それは瞬く星とは違い、白く半透明で煙のよう。 だがここは地上よりだいぶ離れた高さにある。 下で火を起こしていたとしても、相当な火力でなければあれほどの量の煙は出ない。 それにその煙は下から上がってくるではなく、ふわりふわりと宙を自由自在に舞っている。 それはまるで……、 「人魂か?」 「ぱんぱかぱーん!大正解よ、オズの魔法使い。いえ、今はオズの召使いというべきかしらね」 途端、その白い靄がオズのすぐ近くまでやってくる。そして人の形を造った。 実態こそないものの、形作る靄ははっきりと輪郭を写しており、それが一体誰の人魂なのかはっきりと分かった。 オズは戦慄した。 「君は東の魔女……!?馬鹿な、死んだはずじゃあ……」 「またまた正解!ぱんぱかぱーんよ」 月明かりを背後に回し微笑むは、つい先日ドロシーたちが従える兵隊たちによって殺されたはずの東の魔女だった。 西の魔女とそっくりの高い鼻。地面につきそうなほど伸びている髪。 オズと同じく秘薬の力で若さを維持しており、実態がありもしないのにその美貌は衰えていない。 本能を刺激するような魅惑する微笑を浮かべ、オズを見下ろしながら東の魔女は口を開いた。 「私って天才なのよねぇ。ほら、ドロシーが私の家に家ごと落下してきた時も、私って死んだように思われてたでしょう?けど、さりげなく生きていた。あの時はぎりぎり逃げ出したんだけど、先日のは案山子に一杯食わされちゃってねぇ。ついつい殺されちゃったの。でも天才だから、何とか人魂として魂を維持できる魔法をかけといたのよ」 東の魔女ほどの魔力があるならば、人魂でも生前と何ら変わらない力を維持することが出来るだろう。 「なるほど、脳みそのない案山子がやりそうなミスだ」 「でしょう?」 「で、僕の前にのこのこ現れて何の用だ?言っておくが、今こそ僕はドロシーの下僕みたいな扱いだが、何も力が衰えたわけじゃあない。身体のないお前を倒すことなんて、造作もないことなんだぞ」 キッとオズは東の魔女を睨む。しかし、東の魔女の顔は涼しげだ。
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