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ふと、嫌な気配を感じた。
複数の足音が…こっちに近づいてくる。まさかっ!
「おい、早く逃げろ!」
「え?おねーさんどうしたの」
青年は魔法が使えないと言った。
つまり気配を感じとることが出来ない。
わかっているつもりなのに焦りが冷静さを失わせ判断を鈍らせる。
魔力をもつ魔物や人間除けの結界を張っていた。
そのせいで、自分で魔力を広げ感知する事が出来ないのをすっかり忘れていたのだ。
なんて馬鹿なんだ私は。
青年と少女が二人とも魔力無しということは、街にはたくさんの魔力無しがいるのだろう。
だから私の結界に入ってこれた。
青年に街の人々の闇を見てほしくない。
「ああ、もう!!
早くどっか行けよ」
口からでた言葉に自分で驚いて、青年を振り返った。
彼は俯き、肩を震わせた。
「また、明日ね」
へへ、と笑った。
彼はよくこの笑い方をする。
私はいつもこの笑顔に安心してしまう。
「そうだな。また、明日」
明日にはもう、私はいない。
私はまた嘘をついた。
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