第一章

5/22
前へ
/95ページ
次へ
「おねーさんは旅に出たいとか思わないの?」 「旅?」 急になんの話だ。 「僕は見てみたいんだ、この世界を。」 そう言って目を輝かせた青年を羨ましく思った。 世界、か。 「全部を見て回るには時間もお金も足りない。魔法すら僕は使えないしね。」 でもさ、と私の瞳を見つめた。 「想像もつかないような景色が広がってる、って思うとわくわくしない!?」 曇りのない純粋な笑顔。 …夢に出てきそうだ。 「私にはよくわからない」 ぶっきらに言い放った。 たぶん青年に嫉妬していたのだ。 私はこの世界に居てはいけないものだから。 「あお君」 ーー誰の声? 声の方へ振り向くと、青年と同じくらいの女の子がいた。 肩までの髪を可愛く2つに結んでいて、少し目がつり上がっている可愛らしい少女だ。 あおって…青年の名前? て、名前なんかどうでもいい。 「お前まさか、彼女に私のことを」 「言ってないよ!」 青年も混乱している。 でも、じゃどうして少女が此処にー。 「あお君、その人誰?」 そう言って私を睨んだ。 …なぜ? 青年を見ると、気まずそうに目をそらした。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加