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「おねーさんは旅に出たいとか思わないの?」
「旅?」
急になんの話だ。
「僕は見てみたいんだ、この世界を。」
そう言って目を輝かせた青年を羨ましく思った。
世界、か。
「全部を見て回るには時間もお金も足りない。魔法すら僕は使えないしね。」
でもさ、と私の瞳を見つめた。
「想像もつかないような景色が広がってる、って思うとわくわくしない!?」
曇りのない純粋な笑顔。
…夢に出てきそうだ。
「私にはよくわからない」
ぶっきらに言い放った。
たぶん青年に嫉妬していたのだ。
私はこの世界に居てはいけないものだから。
「あお君」
ーー誰の声?
声の方へ振り向くと、青年と同じくらいの女の子がいた。
肩までの髪を可愛く2つに結んでいて、少し目がつり上がっている可愛らしい少女だ。
あおって…青年の名前?
て、名前なんかどうでもいい。
「お前まさか、彼女に私のことを」
「言ってないよ!」
青年も混乱している。
でも、じゃどうして少女が此処にー。
「あお君、その人誰?」
そう言って私を睨んだ。
…なぜ?
青年を見ると、気まずそうに目をそらした。
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