第一章

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月が照らす森は妖艶でとても美しい。 だが、夜になった森は恐ろしく危険だ。 風の囁き、葉のかすれる音、森全体の共鳴。 何十年ここにいても飽きないのはこの森のお陰だと思っている。 たくさんのことが学べる素敵なところだ。 今日は満月。 月を眺めていると落ち着く。 足音。 …何かが近づいてくる。 走り出す準備をしながらもずっとその方向を見つめた。 草が揺れる。 「おねーさん」 出て来たのは青年だった。 「お前、どうしてここに?」 「おねーさんが寂しがってるかなって」 「まったく…」 青年は私の隣に腰を下ろした。 「笑顔」 「え…?」 「笑えてなかったよ」 う…やっぱり。 それであんな泣きそうな表情をしていたのか。 私なんかを気にかけて。
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