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はるにれ君と初めて話したのは、十月の初め頃だったと思う。
帰りの会での席替えで、私は窓際から二列目の一番後ろの席になった。
はるにれ君は窓際の一番後ろで、私の隣の席だった。
「はるにれ」というのは彼の名前で、決してあだ名ではない。
「田中はるにれ」
出席簿の点呼ではるにれ君の名前が呼ばれる度に、変な名前だなっていつも思ってた。
ちなみに「はるにれ」っていうのは木の名前らしい。
昔、テレビで観た某会社のCM、鮮やかな緑色の芝が広がる草原に、一本の大きな木がど~んと立っている。
太い幹に、両手を空に向かって仰いでいるみたいな枝先、その先にモリモリと茂る葉。
一度訊いたら永遠と頭の中でリピートされる耳に残るCMソング。
そのCMで出てくる木こそが「ハルニレの木」なのだ。
はるにれ君は顔が半分位隠れるような、大き目なフレームの黒ブチメガネをしていた。
カラスみたいに真っ黒な髪は伸ばしっぱなしで、いつもあり得ない寝癖がついていた。
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