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そう久保が言った瞬間トタンのドアが激しい音を立てた。
「くぼおおお!」
同時に何人もの怒号が響き、久保が地面に置いたナイフを取る間もなく駆け込んできた複数の人間に取り押さえられすぐさま外へ引きずられていく。
「歩……」
聞き慣れた声が俺を呼びながら近づいてきた。
持ってきたのか毛布を俺にかけると横向きに抱き上げられる。
「来たのか」
「当たり前だろう」
「亜輝は?」
「保護した。今夜は一晩病院に泊まる」
「怪我、してんのか」
「いやしてない。念のためだ」
そっか。亜輝が無事ならそれでいい。
もうこれで大丈夫。そう思った瞬間身体が沼に引きずり込まれるような感覚に陥る。
「悪い……もう、ダメ、みたいだ……」
凌駕の俺を呼ぶ声を最後に俺は意識を失った。
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