まえがき

38/52
前へ
/120ページ
次へ
「放せ歩。俺はまだやることがあるんだよ」  抱きついたとき血の匂いと火薬の匂いを感じた。  おそらく久保はもうこの世にはいない。そしてそうしたのは凌駕だ。  凌駕は五代目として初めての仕事をした。それがきっと凌駕をこんなふうにしたんだろう。 「五代目としての仕事をしたんだな」  より強く抱きしめると、強ばっていた凌駕の身体から力が抜ける。 「……お前には、知られたくなかった」 「今さらだろう。お前がそういう家業だってことはガキの頃から知ってる」 「それでも……それでも、お前には知られたくなかったんだ」  汚い部分を俺には見せたくない。その気持ちをうれしく思った。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

582人が本棚に入れています
本棚に追加