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亜輝が来てから三日、俺はバイトくんに店を任せてゲイバーに配達に出掛けた。亜輝が来た日にオーナーが代わったことを聞いたからだ。
これからもうちを利用してもらうためにはちゃんと挨拶に行っておかなきゃな。
「こんにちは、今井酒店です」
裏口から入って店内に声をかけると、派手な支度をしたママが奥から出てきて嬉しそうに笑いながらダミ声で話しかけてきた。
「あっらー、歩ちゃんいらっしゃい。最近来ないから寂しかったのよぉ。オーナー代わったって聞いた?」
「すっかりご無沙汰しちゃって。うちのバイトくんに聞いたんで、今日は俺が配達に。オーナーだった山田さんどうしたんですか」
「隠居して余生を趣味に費やすんですって! 全く羨ましいわよねえ」
やっぱりそうか。他にも店を何軒か持っていたから余生を遊んで暮らせる程の金はたっぷり持っているんだろう。
「じゃあ俺、あとで山田さんのところへ行ってみます。それで、新しいオーナーに挨拶したいんですけど、今日は来てますか」
来てるわよと言ったママは、耳打ちするように俺に顔を寄せてきた。
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