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「いらっしゃいませ。あれ? ママが店に来るなんて珍しいですね」
店に現れたのは、出勤前であろう派手に着飾ったゲイバーのママだった。
「ちょっと近くまで来たもんだから寄ったの。それより聞いてちょうだいよ! あの新しいオーナー辞めちゃったのよ」
「えっ、あのレイ……久保さんて方がですか? どうしてまた」
「それが私たちも良く分からないんだけどね、何でも夜逃げ同然でいなくなったらしくって」
声を潜めて話すママはあまり残念そうじゃない。
「でもママ、あんまり気にしてなさそうですね」
「まあね。これは、俺も知らなかった事なんだって前オーナーが教えてくれた事なんだけどね……」
どうやらあの男は、銀龍会の中でも裏切り者として目をつけられていた人物とつるんでいたようで、その男共々姿を消したそうだ。
そして既に新しいオーナーも決まり、これで店は安泰ねと言ってママは意気揚々と帰って行った。
このタイミングで……。まさか凌駕が?:いや、まさかな。俺は何も言ってないし、凌駕にも何も聞かれていない。考えすぎか……。
まああの男が居ようと居まいと俺には関係ないけどな。
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