まえがき

28/52
前へ
/120ページ
次へ
 亜輝のことしか考えられなかったとはいえ、のこのこ俺がここに来たばっかりに凌駕が死ぬかもしれない。そう考えただけで心臓が冷たくなり、全身の血の気が引いていく。 「俺だけが命をかけるのはおかしいだろう。あいつらにも命かけてもらわないとな。あーあー、すっかり怯えちゃって。愛する男が死ぬかもしれないんだもんな。そりゃあ怖いよな」  久保の笑い声が遠くに聞こえた。  さっきから耳鳴りがひどく、忘れていた怠さが何十倍にもなって俺を襲う。  凌駕……大丈夫だよな。お前は俺を置いて死ぬわけないよな……?  今回だってうまく立ち回って助けに来てくれるんだろう。なあ、そうだよな。凌駕……。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

583人が本棚に入れています
本棚に追加