手腕

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「…で?撮影始まるの?」 「ああ。30分後スタンバイ。」 「ちょっと。離して。」 「…瑞樹?俺は仕事に行ってくるから。 くれぐれもこの場所から離れないように!くれぐれもだぞ!」 「ハイハイ。」 「…冷たい…」 「二度言わなくても分かってる!」 「お前。さっきは俺の楽屋にいなかった挙げ句にフラッシュたいたくせに。」 …あ。…すっかり忘れてた。 「それはそれ。これはこれ。ちゃんと…ンン!」 「そう。ちゃんと守れ。」 「…人前でキスするなぁ!!!」 「「アハハハ!」」 このキス魔、どうにかならないもんなのか! 大笑いしながら出ていく二人を見送り、静かになった楽屋内。 「……暇だ。……寝よ。」 海斗の上着を取り、畳間で横になって目を閉じる。 ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ 同時に鳴り響いた携帯に目を開け、液晶を見ると思わず微笑んでしまった。 「もしもし?紗智?」 『あ、瑞樹ちゃん!元気にしてる?』 「元気だよ。1週間前会ったばっかりじゃん。」 『まだそんなもん?ずっと昔に思えた。』 「アハハ!…で?どうしたの?」 『さっき大翔先輩に会って、瑞樹ちゃんが事務所にいるって言うから電話かけてみた!今、どこにいるの?』 「海斗先輩の楽屋。」 『本当?先輩たち、今から撮影でしょ?こっちに来ない?』 「え。いいの?行く行く!」 『いつもの練習場ね!みんなもいるよ。』 ……電話を切ったあと、ちょっと罪悪感。 ま、バックダンサーと一緒なら、海斗も許してくれるはずだし。 多分、これは大翔の思惑通りだろう。 そう思いながらカメラを持って下に向かった。
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