last special【新婚旅行】

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こうして外を歩いてると、たまに声をかけられたりする。 アメリカは、普通にサングラスをかける人が多いから同化しながら歩ける。 出来るだけ目立たないように。オーラを消して。 それでもファンの多いアメリカでは、気付く奴もいたりする。 「やっぱり多いんだね。海斗のファン。」 「…悪い。ごめんな?」 「フフッ!どうして謝るの?凄いよ。誰彼に自慢できる旦那さんじゃん?」 "自慢できる旦那さん"だって。 ニヤけてしまうじゃねぇか。 俺だってお前は自慢できる奥さんだよ。 こんな調子で過ごしてきた新婚旅行5日目。 とうとうファンに囲まれてしまった。 "プライベートだから"と言っても離れてくれず、逃げようとすれば追い掛けてきて騒ぎが大きくなってきた。 瑞樹を見ると、笑顔で俺の手を離し、少し離れたベンチに座ってニコニコと傍観し始めた。 …ゴメンな。本当にゴメン。 ここでも我慢させるなんて、情けねぇ。 瑞樹が離れたためアイドル"高山海斗"に変わる。 ファンサービス、そして相応の対応。 が。 「…海斗?」 「…え。…………理奈。」 思いもよらない人物が目の前に現れ、一瞬時間が止まった。 あの映画祭の騒動以来の再会。 その雰囲気は、別れた当初とは違い、幾分柔らかくなっていて。 「…久し振り。」 「ここで…何を…」 「私ね、今、ブロードウェイに出るために頑張ってるのよ。今日は息抜きでロスに来たの。 ここで会えるなんて。ニューヨークから出てきた甲斐があったわ。」 うるさいファンに囲まれながら、聞き慣れていたその声は、すんなり俺の耳に入ってきた。 「それにしても、相変わらず凄いわね。協力しようか?」 「…は?なに言っ」 …油断した。 理奈は俺の首に手を回し、キスをした。
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