last special【新婚旅行】

24/33
前へ
/499ページ
次へ
「…何すんだよ!お前!!」 「別にヨリ戻そうとか考えてないわよ。…罪滅ぼし。」 「はぁ!?」 「今さらだけど、あなたには迷惑かけたと思ってるし、悪かったとも思ってる。 だから協力してあげたんじゃないの。…逃げるなら今じゃない?」 周りで騒いでいたファンは、凍り付いたように目を見開いて固まっていた。 そこでハッ!となる。 「……瑞樹!!!止まれ!!!」 瑞樹がいたはずのベンチは空席で、はるか向こうに走っていく後ろ姿を捉えて叫んだ。 だが、振り返ることもなく。 (…あの女…!本当トラブルの元!) 放心した集団から抜け出すのは簡単だった。 あいつの思い通りになるのはムカつくが、ファンから逃げるためには有効だった。 …ゴメン。瑞樹。 土下座して謝るから。 …俺から離れるな。…行かないでくれ。 俺との間に距離がありすぎて。 角を曲がった瑞樹を最後に見失ってしまった。 「…瑞樹…!」 瞬間、自分を襲う恐怖。 新婚旅行なのに、何をやってんだよ。俺。 また瑞樹を苦しめて。 元カノとキスとか。 それが原因で、離れていったらどうするんだ。 ……単純に怖い。 瑞樹。離れないで。俺の傍にいて。 笑っていて。ずっと俺だけ見て。 ホテルに戻ってみたが、瑞樹が帰ってきた様子もない。 知らない土地。知らない言葉。 どれだけ不安になってるかと思えば、胸がギュッと締め付けられる。 同時に、日本より治安の悪いアメリカで、トラブルに巻き込まれでもしてないかという不安。 あれだけ神経を尖らせて守ってきたのに。 離れてしまったら意味がない。
/499ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3349人が本棚に入れています
本棚に追加