last special【新婚旅行】

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こんなに広い場所で、簡単に見付けることが出来るなんて、やっぱり運命なんじゃねぇの? …なんて、らしくないことを考える。 夢中になって海に沈んでいく夕日をカメラに収めている。 10mほど離れた場所に座って、後ろ姿を眺めていた。 光る水面。オレンジの空。 黄金に輝く太陽。 そして愛しい瑞樹のシルエット。 今、俺がカメラを持っていたら、お前と同じように一心不乱にシャッターを押していた。 今まで見た景色の中で、最高の画。 脳というメモリーカードに記憶させ、まばたきというシャッターを何度も切った。 しばらくすると、メモリーカードの残量が底をついたのか、カメラを下ろして溜め息を吐いた。 その場に座り、沈み行く夕日を眺め、完全に消えると立ち上がった。 そこで初めて振り向き、俺に気付いた。 一瞬目を見開いた。 が、すぐに視線を落とし、悔しそうな表情をした。 「…瑞樹。帰ろう?」 「……………」 俺の問いかけには反応なし。 でも、ホテルの方向へと足を向けて歩き出した。 ホッと胸を撫で下ろす。 だんまりを決め込む瑞樹のあとを黙ってついていく。 時折、店のガラスで俺を確認する姿が可愛い。 そんなことしなくても目を離すもんか。 ちゃんと傍にいるから。 ホテルに着くと、すぐにソファに座ってデジカメを弄り出した。 その横に座って、瑞樹に問いかける。 「…瑞樹?腹減ってる?」 無言で首を横に振った。 「…ゴメンな。」 そう言うと、瑞樹の感情が溢れ出した。 思わず抱き締める。
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