last special【新婚旅行】

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翌日、最終日の朝。 いつもよりゆっくり起きた。 「……海斗ぉーー……エヘヘ……すきーー……」 「……………」 そういう瑞樹はまだ夢の中。 「…やーーん……海斗ぉ………ハリウッド!」 「ブハッ!!」 一体どういう夢見てんだよ。 思わず吹き出してしまった。 鼻をキュッ!と摘まむと、「ふぇ?」という間抜けな声と共に目を開いた瑞樹。 「おはよう」と言えば「おはよう」と笑顔で返され、なんとも言えない幸福感に満たされる。 昼を過ぎてからホテルを出て、観光スポットを廻った。 やっぱりカメラを片手に歩く瑞樹。 「そこに立って!早く!」 「ハイハイ。」 そして、そのファインダーのターゲットはやっぱり俺なんだよな。 瑞樹にとって、俺は"願望"と同じ。 その昔、両親のために握ったカメラは、自分を見つけてくれるようにという願いからだった。 それが果たされた今、未来に向かって共に歩む幸せという願いを込めてカメラを握る。 …と。瑞樹が急に何かを考え始める。 「瑞樹?どした?」と声をかけても反応がない。 カメラに夢中の例の状態。 呆れながらも、見守っていると。 「海斗。10cm左。…右足に体重かけて、斜め50度くらいの角度でこっち見て?」 …やれやれ。ハリウッドの看板も目に入ってない様子。 言われた通りにポージング。 小さな岩を三脚がわりにカメラをセットすると、その目を輝かせながら俺に向かって走ってくる。 「…海斗。この位置で、笑顔でキスして?」 「…観光客多いけどいいの?」 「うん。」 ご要望通り、笑顔でキスをする。 セルフタイマーが終わりを告げるシャッターの音がするまでの長いキス。
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