手腕

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起き上がると、残り時間を"一発勝負"の課題で考える。 今、二人が着ている衣装は、非常にシンプルな黒と白のシャツとジーンズ。 「…綾瀬?」 「……………」 「…やれやれ。スイッチが入ってる。」 「変わらんな。この集中力。」 「頭の中、構想立ててのベストショットがグルグル回ってるぜ。」 「確かに。」 …うん。この衣装、普通にデートで着て欲しい 目立たず、かといってオシャレに手を抜いてるわけでもない。 大翔に近付くと襟を立ててボタン上3つ開ける。 襟と一緒に胸元も開き、シャツの片方だけをジーンズの中に入れる。 次に海斗に近付いて、ボタン下3つを開ける。 シャツの裾を片方持たせると、それを胸元の位置まで上げて完了。 大翔の髪を遊ばせ、海斗の髪を浮かせる。 「すみません。照明をスポット以外、全部落としてください。そのスポットに茶色のフィルムを被せて。 東さん。顎引いて3mm右、視線は私のウエスト。 高山さん。5mm外側向いて、視線はレンズ。」 そして、自分のレンズの前に濃い黄色のフィルムを被せる。 ファインダーを覗けば、セピア色に煌めくセクシーな二人が見える。 「高山さん、体重右足。東さん、体重左足……そのままで。 ……海斗。大翔。…その唇で私にキスして。愛を囁いて、すべてを私で満たして欲しい。」 そう呟けば、海斗は少し目尻が下がって優しい目になり、大翔は溜め息を吐きそうなほど呆れた表情になる。 パシャ!! 憂いた時期もあった。 喧嘩したり、悲しく辛い時期も。 でも乗り越えた今、その優しい目で包まれる愛を感じている。 それを表現した"一発勝負"
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