愛着

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久しぶりにあの女の夢を見た。 自分にとって忌まわしい記憶・・・・小さい時の記憶。 忘れていたと思っていたのに、急に夢に出てくるなんて・・・啓介の母とは全然違う。なぜか目から涙が溢れた。 鏡の中の自分はげっそりしていて真っ青な顔をしていた。気持ち悪い・・・・吐き気がする。 「琳・・・?」 「啓介」 「どうした?」 「起こしちゃった?」 「まぁな。ベッド狭いから」 「ごめん」 「具合悪いか?」 「うん、いやな夢見た」 「そか、怖かったな」 そう云って啓介は僕の頭を撫でた。柔らかく優しく・・・・手の温もりが心地いい。 なんでか心のどこかがチクチクする。 「啓介・・・・バカ」 「なんだよ、急に」 ぼろぼろと零れ落ちる涙・・・・なんでだろう。どうして泣いてるんだ? 「琳、怖かったんだな」 そういって抱きしめてくれる。心臓がドキドキして・・・・おかしくなりそう。 「傍にいてやるからぐっすり寝ろ」 大きな手が掌を包む・・・・涙は止まらない。 今日は風が涼しい・・・・秋の空気がそこまで来ているのかもしれない。 暑苦しい大きな男が自分を抱きしめているの嫌だとは思わない。なぜか自分から縋りついた。柔らかさも何もないのに妙に心地いい。 「落ち着いたら寝ような。あさってから学校だ」 「学校・・・・行きたくない」 「最低限は勉強しておけよ。将来やりたい仕事とかあるだろ?」 「誰かが食わせてくれればいい。そしたら躰で払えばいいだろ?」 「だからその考え方やめろって。自分で稼げば嫌なヤツの相手なんてしなくて済む。自由なんだ」 「自由?」 「暴力も受けないし、Hを強要されなくて済む」 「別に強要じゃないよ。H好きだし」 「俺にはそうは見えないけどな」 「なんでそんなこと言えるんだよ。僕の事なんてちっともわかってないくせに」 「Twitterとか見てて思ったんだ。お前、本当はそんなこと好きじゃないんじゃないかって。ただ義理でしてる感じがする。それしか対応を知らないというか」 「勝手なこと言うな!」 「・・・・ごめん。勝手に思っただけかもしれない」 「・・・・・・」 自分でもわからなかった。本当に気持ちいいのか。本当にセックスが好きなのか。確かに人間の温もりを求める方法をソレしか知らなかった。 他人が抱きしめてくれる手がこんなにあたたかかったなんて初めて知ったんだ。
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