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「ね、ね。楽しそうだから京ちゃんも一緒に行かない?」
そう言ってまゆらが京介に小洒落た封筒を見せた。
紅茶をティーカップへ注ぐ手を一旦止め、彼は彼女の声に振り返る。
「ハロウィンパーティー……」
そして、そこに書かれていた文字を読んだ。
「招待状ですか。そう言えば、そんな時期ですね」
再びティーポットを傾けながら、まるで他人事のように穏やかに京介は言う。
名家である富士城家の令嬢である彼女に、こういった催しの招待状が届くのは別に珍しい事ではない。
「ですが今回は 私はご遠慮致します、お嬢様」
ドレスコードのパーティーならばうら若い彼女が淑女として振る舞えるよう、彼女専属の執事である京介のエスコートも必要だろうが、内容を確認する限り、どうやら今回はそうではないらしい。
「ですので、ご友人と心置き無く楽しんで来て下さいませ」
そう言いながら、京介はまゆらの前にティーカップを置いた。
令嬢だからと言って、必要以上に過保護にせず、彼女に自由な生活を許すのが富士城家当主、つまりは彼女の父親の方針。
そのため他の従者同様、京介もそれに倣っていた。
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