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「えー……」
ティーカップを右手で持ち上げながら、まゆらは微かに唇を尖らせる。
その瞬間、京介は自然を装い、ふいっと顔を背けた。
あまり長く見ていると穏やかな感情が波を打ち出す。
京介は執事の身でありながら、密かに主人であるまゆらに恋心を抱いていた。
しかし、決して表には出さぬよう、誰にも悟られぬよう、仕事に徹し、執事としてただ彼女を見守っていた。
京介の覚悟は決して生半可なものではない。
「でも……」
悄気たまゆらの声に、京介は再び彼女に目を向ける。
「必ずペアでって書いてあるから……」
「理名様と、彩花様は?」
彼女の通う大学の友人の名を出して京介が尋ねると、
「二人がペアだもん」
ため息をつきながらまゆらは頬杖をついた。
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