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彼女の脳裏には、『私たちでペアになるから、まゆらは執事さんと行けばいいじゃない』と楽しげに語っていた、数日前の理名と彩花の姿が甦る。
「また余計な事をして……」
それは彼女の一人言。
「何か仰いましたか? お嬢様」
しかし、出来の良すぎる執事は彼女の小さな言葉も拾って尋ねて来る。
「んーん、なんでもない」
と、彼女は誤魔化し紅茶を飲んだ。
令嬢と執事。
主人と従者。
あってはならないと頭で分かっていても、ふとした瞬間に見せる京介の表情に惹かれ、微かに揺れ始めた気持ちに、彼女自身も上手く対応出来ずにいた。
「……分かりました。他に当てがないのならば、お供致しましょう」
しばらくの沈黙の後、やれやれと言うように京介が口を割った。
その言葉に、まゆらが顔を上げる。
「本当!?」
「はい」
京介の返事に、まゆらがパッと目を輝かせた。
「ありがとう、京ちゃん!」
それから数週間後────。
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