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「キ、キス?...殴られたって...」
「恋人がずっといたんだよ。【あなたは私の教師生活最後の大事な生徒です】ってはっきり言われた。
でな...先生2学期の終業式の後学校やめたんだけど...その後、恋人と一緒に事故で死んじまった。お腹に...赤ちゃんもいたんだって。」
先生は...その場にしゃがんで、ぐっと目頭を押さえて涙をこらえようとしているみたいで、私はとっさに先生の頭を両手でぎゅっと抱きかかえた
「あの先生...金木犀が好きだった。俺がトイレの香りって言ったら本気で怒ってた...。授業サボってる俺を怒らずいつも笑ってくれた...ガキだったけど本気で好きだったんだ...」
先生...
あの木を見ながらずっと15歳に戻っていたの?あの香りがその記憶をよみがえらせるからわざとたばこで消そうとして...でも、消したくなくて...だから...
「先生...本当は金木犀の香り、好きなんだね。先生が好きだったから」
「...そうなのかもな」
先生が、私の腕の中で微かに震えた。
いいよ。泣いて...先生のその思い出も私と先生の【秘密】にしていてあげる。
先生にとって、初恋は...幸せな時間であって苦しい記憶なんだ
香りは記憶をよみがえらせる。
先生はきっとここで働いているとき辛かったんじゃないだろうか
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