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先生...こうやって先生を抱きしめてあげてたら先生のその苦しい気持ち、少しは楽になるのかな。
私は先生に何もしてあげられないのかな...
「...悪かったな。もう大丈夫だ」
そんなことを想いながらいると、先生が私の腕の中から離れた。
ほんの少し赤い瞳。
濡れたまつ毛。
「先生?私...先生が好き。【憧れ】じゃなくって先生は私の...【初恋】だよ」
ぽろぽろとこぼれる涙。
この告白は、うまくはいかないってわかっているのにどうしても伝えないといけないって思った。
「...お前と同じ時に生まれてたら...その気持ち受け取ってやったのにな」
先生は目を細めて私の涙をそっと拭って
私にキスをした。
それはほんの一瞬の出来事。
「ありがとう。...いい女になって、いい男見つけろよ?」
離れた唇が優しくそう囁いて、先生が私をぎゅっと抱きしめた
「うっ...うん...」
先生のスーツをきゅっとつかんでほんの少しだけそのぬくもりを記憶したくて私は泣いた。
窓からわずかに香った金木犀。
先生...
あれから私も先生と同じ年になって、先生とは違う男の人と結婚した。
でもね、先生を...私の初恋を思い出すの。
金木犀の香りが漂うこの季節に。
先生、先生は今...幸せですか?
私は
とても幸せです。
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