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そんな先生と私に【秘密】ができた。
教科準備室ばかりの2階の校舎。
偶然にもクラス全員の国語のノートを集めて持って行った国語科準備室で、私は儚げな表情で中庭の金木犀を眺める先生の横顔を見てしまった。
手には教師であっても校内では禁止されているたばこを持って。
私に気付いた先生は私を招き入れて、たばこを携帯灰皿の中に押し込んでから、教室の隅にある小さな冷蔵庫の中からオレンジジュースの缶を二つ取り出してそのうちの一つを手渡しながら
「それ、口止め料ね?」
って微笑んだ。
それを受け取って隣同士でパイプ椅子に座って飲むそのジュースは、今まで飲んだ中で一番甘酸っぱくて、心臓が変な鼓動を打ち鳴らしていた。
「えと、三井...だったよな?悪いな。名前おぼえんの苦手で」
「三井直美です。たくさん生徒がいますもん、みんな覚えるの大変ですよね」
「三井...直美ね。今ちゃんと覚えた」
先生がこっちを向いていつもと違う微笑みを私に見せてさっきからおかしかった鼓動がもっと大きく私の胸を叩いていてその音が隣に座っている先生にまで聞こえているんじゃないかってさらにハラハラしていた。
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