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私は翌日から準備室に行くことはなくなった。だって、先生は私以外の男子生徒に頼むようになったし、あの準備室に行かなくなったから。
授業が終わって放課後、みんなが部活をしているときも職員室にいるみたいだった。
薄暗くなった中庭。
金木犀の木の下から先生がいつも煙を吐き出していた場所を見上げたけれど、窓もカーテンも閉められてあかりもついてはいなかった。
鼻をかすめる甘い花の香り。
先生、私こんなに胸が苦しいです。
先生と並んでお喋りしたい。
もっと...みんなの知らない先生が知りたい。
この気持ちは先生が違うって言っても【恋】だと思うんです。
はらりと肩に落ちてきたオレンジ色の金木犀の花。その花を手に取って私はその甘い香りを一度だけ嗅いでから、その場所を離れた。
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