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もうすぐ、秋が終わろうとしている。
夕暮れと暗闇を早く迎え入れて冬に変わっていく空と空気。
そして...
はらはらと落ちていく中庭のその花は、木の下にオレンジ色のじゅうたんを作り出して少しづつ甘い香りを失っていく。
私は毎日そのじゅうたんの上に足を踏み入れて、先生がいないか空を見上げた。
いないって...わかっていたのに。
先生への想いと、初めて見た時の先生のあの表情が離れない。
あの窓からここを見下ろしながら何を想っていたの?
女の子の噂話で聞いたのは【先生はここの卒業生】だったってこと。
先生は、あの窓からここにいた時の思い出を見ていたのかな金木犀の香りがよみがえらせるその思い出をたばこの煙で消そうとしていたのかな。
縮まっていた距離はあっと今に離れて、あの【秘密】は幻だったかのように朽ちる葉のように...褪せていく。
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