83

1/11
前へ
/11ページ
次へ

83

 一回戦は非公開で、1年3組の生徒たちだけでおこなわれた。放課後の柔術場の窓にはカーテンが引かれ、全員思いおもいの格好(かっこう)で集まり、グループごとに距離をおいて畳に座っている。奥の壁からはズドンッ、ズドンッと迫撃砲を発射するような響きが足元を揺らしてきた。  ジャージ姿のクニが声を潜(ひそ)めていった。 「おい、あれ、だいじょぶか」  タツオの顔色は青くなっている。壁を揺らすのは、廊下で相撲部の後藤がコンクリートの壁に平手で鉄砲を繰り返す稽古(けいこ)をしているからだった。まともにくらえば、一発で意識が飛ぶだろう。なにせ体重が倍近くあるのだ。 「ぜんぜんだいじょぶじゃないよ」  タツオはその場を逃げ出したいくらいだった。ジョージは涼しい顔でいう。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

405人が本棚に入れています
本棚に追加