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「あのときお礼も言えなかったし、何より蕾斗さんに会いたくて……ずっと探していました。同じ時間の電車に乗ってみたこともあったんですよ」
美波と全速力で走ったあの日のことを思い出して、つい笑ってしまった。
「でも、見つからないまま一ヶ月が経って、もう見つからないのかなぁって諦めて、合コンに行ったんです」
蕾斗さんがこっちをじっと見ながら聞いているから、どきどきしすぎて目を合わせられなくて……
あたしは目の前にあるコーヒーカップを見つめながら、続きを話した。
「蕾斗さんの姿を見たときは、ほんとに嬉しくて……でも美波が『諦めな』って。理由を聞いて、あたしも納得したし、遊びで付き合うのなんて絶対に嫌だったし」
あのとき流した涙を思い出して、目の奥が熱くなってきた。
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