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そして土曜日。
約束の五分前に蕾斗さんがやってきた。
蕾斗さんは車から降りて、助手席のドアを開けて、
「乗って」
と言ったけれど、
「どこに行くんですか?」
あたしは警戒心丸出しで。
だって、このデートみたいな状況に期待して、“実は遊びでした”なんて言われたら、ショックすぎて立ち直れない。
そんな気持ちでいるとは思っていない蕾斗さんは、やさしい笑みを浮かべながらそれに答える。
「まだ決めてねぇ、理彩はどこに行きたい?」
「……」
女には困っていないはずの蕾斗さん。
この行動の意図がわからない。
「とりあえず乗らねぇ? 俺、さみぃんだけど」
「……」
もしここで蕾斗さんについていったら、ますます諦められなくなる。
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