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高瀬家本家の自室に戻ると、珍しく千洋くんの方が先に帰っていた。
今日はてっきり松坂さんはじめあの派手なグループの面々と遊び歩くのかと思っていた。
「早いね」
私がそう言って話掛けると、ベッドの縁に座っていた千洋くんが不意に右手を差し出した。
グウにして前へ突き出す形。
私が千洋くんのグウの下にパアで手を広げると、千洋くんの指が開き、私の手の平に小さな銀色のリングが落下した。
「結婚指輪?」
「そう」
そう言いながら私に見せた千洋くんの左手薬指には、既にソレが光り輝いている。
婚姻届を出したその日に一度だけ付けた指輪。
あとは半年、机の引き出しにケースごとしまわれていた。
そっと指にはめる……なんか変な感じ。
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