彼の不在に

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突拍子もないその発言に、私は姉をまじまじと見つめ返す。 疲れすぎて頭がおかしくなってしまったのかも、なんて考えがちらりと過った。 「保育士って…何言ってるの?無理だよ。資格が要るんだよ?」 「だから資格、頑張って取ればいいじゃない」 私が姉の頭の心配をするのをよそに、姉は逆に飲み込みの悪い私に苛立つかのように眉間にしわを寄せた。 保育士という仕事には、確かに漠然と憧れを抱いていた時期がある。 だから、高校時代、クラスメイトの女の子が『保育士になる』と言って、短大の幼児教育科に進むと聞いたときには少なからず嫉妬をしたものだった。 うちは母子家庭でお金がないからどうせ進学なんて出来ないし、なんて、誰に言うわけでもなく一人で不貞腐れて。 きっと母は、私にもっと熱意があって願い出れば、なんとかお金も工面してくれたかもしれない。 そうでなくても奨学金とか色々、方法はあったのかもしれない。 けれどそこまでしなかったのは単に私に意欲が足りなかったからで、結局はその程度の思いだったということだ。
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