第一章

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 今度は中から「わぁ~っ」と言う叫び声と、「ドン」と言う何かに激突する音が聞こえた。ドア越しで聞こえたんだ、かなりの衝撃で何かと何かがぶつかったんだろう。とりあえず留守って訳じゃあなさそうだ。  少しの間、そう数分ってところか、ドアの前で待っていたら、ドタドタドタっと何か(たぶんラン子だと思うが)がドアの方へ駆け寄ってくる音の後にドアが勢いよく開いた。  「すまない、翔太、待たせたな。じゃあ行こう」  そう言うラン子の頭はボサボサでいかにも寝起きって感じだ。それになぜか制服の上から白衣を纏っている。コートの代わりなんだろうか? そして背中には真っ赤なデイパックをしょっている。足元はさすがにツッカケではなく白いスニーカーだ。  「さっき『ドン』って大きな音がしてたが大丈夫だったのか?」  俺の質問にラン子は頭頂部をさすりながら答えた。  「はははっ、まだ間取りが把握できてなくてな。それに少し慌ててたからな」  いや”少し”じゃなくて”だいぶ”だろ。白衣についてはあえて触れなかった。何となく訊いちゃあいけないことなのかなって思ったからだ。
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