戦士ラブラス【1】

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戦士ラブラス【1】

 骸が動いたように見えた。しかし彼はそれが錯覚であることを知っている。窓から差し込む朝日が、ミイラの顔の見え方に変えたに過ぎない。この変化の訪れを待ちながら槍斧に砥石を当てることが、ラブラスの小さな楽しみだった。  窓から“太陽の大岩”を望む。空の青、木々の緑、岩肌の白が、見事な調和を成して燦然と輝いている。この地に生まれ、この風景に育まれて、神を信じない者などいるだろうか。  神は天上にいる。そして悪魔は地上にいる。 「悪魔は奴らの方だ」  俺じゃない。ラブラスは声に出して言った。  それから、祖父のミイラに朝の挨拶をして、砥石を木箱に収めた。
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