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「おはようございます」
部屋の入り口にルクマが立っていた。
若い兵たちの中で唯一、ラブラスによく懐いている。笑顔はまだ少年のようだが、腕は上げていた。今本気で立ち会えば負けるかも知れない。だがルクマに越されるなら悪くはないとラブラスは思っていた。
「いよいよだな」
「はい」
ルクマの表情は暗い。
「どうした。まさか怖じ気づいているのか?」
「いえ、そのようなことは」
ただ挨拶に来た風ではなかった。入り口に立ったまま、言葉を捜している。
「お尋ねしたいことがあります」
「何だ、改まって」
「将軍は今度の出撃をどのようにお考えですか」
ルクマの言わんとしていることはわかった。この純真な青年は、やはり自分と同じ気持ちを抱いている。
しかしどこで人が聞いているかわからない。ラブラスは方便を使うしかなかった。
「記念すべき初陣だ。戦士団の歴史に恥じぬものにせねばな」
永くこの国には外敵との戦争も内紛もなかった。歴代の戦士団を一括りにして、今日が〝初陣〟である。
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