少年パルタ【1】

1/7
前へ
/35ページ
次へ

少年パルタ【1】

 朝が憂鬱だった。  何百年も昔、より豊かな土地を求めて移動してきた部族が、当時この地にあった他の部族を倒し、統一した。それが現在の王朝である。最後まで王朝に抵抗した部族の血脈が、パルタの住む町に流れていた。  町は何かにつけて王朝に反抗的な姿勢を示していた。自治、自衛の意識も高い。町長は騎士団を率い(自警団でなく騎士団と名乗った)、騎士団に加わることが町に生まれ男の名誉とされた。  パルタの父トウンボも数年前まで騎士団にいた。実力は確かで、引退した今でも騎士団の若者たちに請われて指導に通っている。  トウンボは息子にも立派な騎士になることを望んだ。パルタが六歳になった朝から、稽古をつけ始めた。雨が降ろうと、祭の日であろうと、休みは無い。剣、槍、弓、体術と、あらゆる武術の一流の技をパルタは教え込まれた。  パルタは、それらのどの武術も、好きになれなかった。平和を愛したのではない。  トウンボは、日頃は豪放な人物だったが、パルタに稽古をつける時だけ厳粛になった。そのけじめを、パルタは嫌った。厳しさより不自然さが嫌だった。実の息子故、甘やかしはしまいと力んでいるのだろう。父の心理が理解できないではなかったが、芝居の臭さがパルタには耐えがたいほど鼻についた。  そして、武術を嫌うのに沿って、争いも嫌うようになった。  アウカ人たちに迎合した王朝に対して、反抗する集団は一つではない。今は反乱軍を名乗る組織が大きなもので二つあるが、村や町単位で反旗を翻すところもあった。  パルタの町もその一つである。  誇り高き騎士たちは、遂に戦う時が来たと熱く語り合っていた。トウンボも以前より一層パルタの指導に力を注いだ。しかし、町や父が戦に向けて熱くなればなるほど、パルタの心は冷めていった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加